2012年8月1日水曜日

さようなら、カブリオ <ライネケ院長>

それは、あっという間の出来事だった。



2012年4月30日の夜、ライネケが運転席、ネコパコが助手席、Sora-Gamaが後ろ席に乗って、例のごとく、椿湯に入って帰って来る途中、石手川の土手の上、永木橋の交差点を青信号で通過しつつあった時、若い女の子が運転する高知ナンバーの軽四輪が左から赤信号を無視して突っ込んで来た。

 左から直角方向に、左前輪より少し前に衝突された。後輪を軸にして、右方向に振られる形で直撃されたので、ダメージは、運転席より前方のフレーム、エンジンと前輪ユニットを囲む部分が、平行四辺形に変形する形でショックが吸収され、運転席以後の2/3は無傷で済んだみたいだ。


もう一瞬あとだったら、前左でなく、左ハンドルの運転席を、真左から直撃されることになり、カブリオは前後輪で踏ん張って、くの字型に変形し、運転席のライネケ、その右の助手席のネコパコは、無傷でいたとは思われない。実際は、ネコパコが左膝、左肩を傷めたので済んだのは、不幸中の幸いだった。ライネケはというと、オートバイで転け慣れているから、まあ、こんなもんでしょう。元気だよ。Sora Gama君は、まだ滑走路の上にいたので、戦歴に傷はつかず、元気だ。とにかく、車内に閉じ込められて、ボディ切断して、引っ張り出されて、骨盤骨折・内臓破裂なんていうことにならなくてよかった。


後ろ座席に詰め込まれた子ども達が、後部座席からフロントグラスを通してみてきた風景も見納めだ。


去年はSora Gama君とBen君を乗せて、はるばる九州まで行ってくれた。最後の瞬間は、Sora君が乗っていた。
パワーステアリングがなくて、とてつもなく重いハンドル。手回しのウィンドウ。縫い目の切れたソフトトップ。壊れたエアコンディショナのコンプレッサー。
ジウジアーロのデザインによる、かっちりと角を切ったボディと丸目の前照灯が潔い。



ヴォルフスブルグのフォルクスワーゲン社の生産ラインから出たゴルフ一型が、ドイツのカロッツェリアであるカルマン社に運ばれて、トップを切り取られ、ボディに補強を入れて、塗装され、ソフトトップを架装されて出来上がった。
Cabrioの下には、KARMANNのバッジが誇らしい。おいらはね、スタンダードのワーゲンゴルフとはお育ちが違うんだよ、という証。

フォルクスワーゲン・ゴルフの一型を、と思って、京都ヤナセの滋賀営業所にゴルフのカタログをもらいに行ったら、終わりの方、見開き一杯に、この車の写真があった。まだ、オープンカーなんてほとんど見かけなかった頃だ。営業係の若い人に、「この車はなんですか?」と訊くと、恐縮しながら、「このお車は、お高うございます。」と言った。スタンダードゴルフが180万円程だったのに、このゴルフカブリオは銀色は404万円だと言われて、驚いた。


清水の舞台から飛び降りるような気持ちで、ゴルフカブリオを買った。最初の数ヶ月はローンにしたけど、結局さっさと一括で払ってしまった。以来借金したことはないよ。
わけありげだけど、たまたまもらった初年度登録のナンバープレートとオリジナルの塗装。


いつ見ても美しいと思った後ろ姿。




キーを捻れば、まだ、独特のエンジン音と、お別れのクラクションを聞くことができる。
(▲をクリックする。)








キツネコ一家の思い出を運んで、20万7122キロメートルを走った後、永眠の旅に出る。
初年度登録        1983年7月
廃車のための一時抹消登録 2012年7月28日 
享年29才

本当に、本当に、長い間、ありがとう。



5 件のコメント:

sorneko さんのコメント...

得た喜びは、いつか必ず悲しみに変わることでしょう。
なにかを慈しむには、相応の覚悟が必要なのですね。

だけど、ひとも、ものも一緒に過ごして分かち合った喜びや苦しみが私たちの人生を豊かにしてくれるのだと思います。

沢山の思い出を有難う、カブリオ。

              がま

ライネケ院長 さんのコメント...

<ライネケ。
良いものは美しい。時が過ぎても。
そんなことも教えてくれたような気がするね。

匿名 さんのコメント...

風をうけて、颯爽としている事。
オープンカーのカブリオが私に教えてくれた。

銀色の働き者は、私にとって妹だった。
人間の弟より、付き合いの長い存在だもの。
左の窓際に座って、
後ろからシートベルトを差し出すのが
私の仕事だった。
大きなカバーを掛ける手伝いも私の仕事だった。

多分、私は、どんな高級車に乗せられたって
その車にビクついたりしない。
車は車。走るための道具だから。
風をうけて、颯爽としている事。
カブリオが教えてくれた淑女の作法。

ありがとう。
大好きだったよ。
             chica

匿名 さんのコメント...

僕はものを買うときは悩む。
必要だが気に入ったものがない場合・・大抵の場合はそうだが・・・僕はなにも買わない。
逆に非常に稀だが、気に入ったものがある場合は悩まない。もし、気に入ったものがその他のものの何倍も高くても、性能が悪くても、大抵の場合問題にならない。買ってしまう。

そうやって手に入れたものはどんなに古くなっても、時に戸棚の奥に仕舞いこんでしまうことがあっても、捨てることは出来ない。そのうちにそれは彼や彼女になってしまって自分の人生から切り離すことは出来ないものになっている。

だから、僕はものを買うときは本当に悩む。

ありがとう。カブリオ。
君のシートの味を思い出して今晩は眠るよ。

Haruno

ライネケ院長 さんのコメント...

<ライネケ>
「君のシートの味」・・・しまった、いつもSoraちゃんが噛み付いていた、右側助手席のヘッドレストのカバーを捨てちゃった。あれには、どれほど、彼のよだれが染み付いていただろうね。

Haruno君、気難しいのか、君は、いつも口が重くて、君がしゃべってくれるのを、ライネケもネコパコも、いつも待っていました。特に、この記事に関しては、君が書き込んでくれるのを待ち望んでいました。うれしいよ。
この車は、君が我が家の一員になって、それまでの360ccでは役不足すぎるので、買ったのだからね。

君が物を買う時、下調べを何度もした挙句、散々迷い、結局買わずに帰る、というのを、家族一同何度も見ました。

欲しいものがあれば、多少高くても、買う。ただし、懐具合による。というのは、おいらも同じだよ。高くても、本当に気に入れば、値段のことは忘れてしまうから。

そうそう、倉敷で黒いゴルフ二型を買ったとき、ヤナセのおやじが、カブリオについて言ったもんだ。
「これは、もう、下取り価格0円ですね。廃車ですね。」
そして、あらためて、カブリオを見て、こう言ったんだ。
「意外にまだ奇麗ですね。私がしばらく乗ってから捨てようかな。」だって。
馬鹿野郎、なんで、あんたみたいなおやじに、大事にして来た、このカブリオを乗られなきゃならんのだ?いやなこった!
それで、すでに10数万キロ乗って来て、廃車寸前だったカブリオは、さらに乗り続けられて、そのゴルフ二型よりも遥かに長生きしたわけさ。