2016年7月22日金曜日

野生 <ライネケ院長>

朝から、びいびいとひどく大きな音がする。
ゴロタが何かをくわえてやって来た。


褒めて欲しいのか、とにかく見て欲しいらしい。
それにしても、目が野生だな。


蝉だ。

まだ元気で、ゴロタの口から離れると、パタパタと羽音を立てて、部屋の中を飛び回る。
ゴロタがそれを追いかけ、また捕獲して、弄(もてあそ)ぶ。
食べるわけでもなく、放しては捕まえ、を繰り返して、とうとう動かなくなると、興味を失うらしく、放置する。
今週はもうすでに4匹以上も彼の餌食になったようだ。


むごい話だよ。
一日一善ならともかく、一日一蝉(音は「せん」)だよ。

ただ単に捕まえて、なぶって、死なせてしまうだけ。
これが野生というものなのだろうか。
自然とか野生とか、そういうものなんだろうか。


彼のネコ砂の箱でへたっていたヤモリ。
尾っぽがとれてしまって、それでも、逃がしてもらえなかったのか。

ある日なんか、夜帰宅してみたら、こんなものが床の真ん中にいた。

びっくりするぜ。
かわいそうに。
駐車場の端の草むらに埋葬してやった。
迷わず、成仏してくれ。おいらを恨むなよ。

ほかにも、カエルなんかも連れて帰ってくる。
屋上の草むらが彼の牧場(まきば)なのだろう。
ロナは毎日、外に出かけて行って、広い世界の中で自由に狩りをしていたのだろう。


きれいな目をしているのに、むごいやつだ。

自然には倫理なんてないんだろう。
ただ野生の本能の指示のままにあるだけなのだろう。
考えてみれば、人間なんて、毎日あらゆる生き物を食べて暮らしている。
そんな人間にゴロを非難する資格があるのだろうか。

夏の南の夜空に赤く輝く「さそり座」の中心星は、火星と同じくらい明るいアンタレス(アンチ・アレス=反火星)という恒星だ。「銀河鉄道の夜」の中で、ジョバンニたちと同席した女の子が語ったバルドラの野原のサソリは、神様によって空に引き上げられて、夜空に赤く輝くさそり座になったのだという。

あのサソリを追い詰めたイタチのように、ゴロタも何も知らず、他の生き物を狩って生きているのだろうか。ゴロタもおいらもあのイタチなんだろうか。そして、この世の全てがサソリであり、イタチなのかも知れない。


蝉墜ちて 五十四の夏 過ぎにけり

十年以上も前にふとこの句を思いついて、メモにして、外来の診察机の前に貼っておいたら、ある女性が見て、季重なりだと言った。なるほど。まずかったな。











6 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

おお、モミモミチュッチュを強請る甘えん坊ゴロちゃんとは
ずいぶん顔付きが違いますな。
人間とは違う生き物の掟はわかりませんが、
屋上という自然の中で毎日何かしらの獲物を見つけて
それを院長と事務長に見せるのが、何らかの目的で
あとは自由に走って寝て食べる事が生きる事なゴロ君は
それで良かろうと思います。
そういう生き方もあるのですね。

月曜から土曜までシンガポールへ行ってきます。
こんな生き方があるとも人間ながら思いもしませんでした。
みんな、思いもよらぬ生き方なのでしょうか。
仙人掌姉

ライネケ院長 さんのコメント...

<ライネケ>
シンガポール!?
アジアで一番評価の高い国
ライオンチョコレートの国
実は華僑の国
暑くなければいいねえ。
おみやげは話しの種だけでいいから、元気で戻ってきてください。

sorneko さんのコメント...

シンガポールはどんなじゃろうか。。。
とりあえず暑そうだ。
がま

ライネケ院長 さんのコメント...

<ライネケ>
Gamaくん、元気か?
一緒に飯でも食えればいいんだが・・。

sorneko さんのコメント...

http://pets.yahoo.co.jp/photos/M2tKUVY5X3pWY1VBOEZsSHRfeTdxUE41OTZYQw%3D%3D/MlRSY1RGenNTc1RfU0tDSkRYZ2tMSlMxUF9mNnJZTDc%3D

ごろた、おまえひょっとして、マンチカンやったんか?!

http://pets.yahoo.co.jp/photos/M2tKUVY5X3pWY1VBOEZsSHRfeTdxUE41OTZYQw%3D%3D/MlRSY1RGenNTc1RfU0tDSkRYZ2tMSlMxUF9mNnJZTDc%3D

ライネケ院長 さんのコメント...

<ライネケ>
見ました。
よく似てますね。
足と尾っぽの短いところまで。
目は違うけど。

最近、久しぶりで、ロナの写真を見ました。
あまりにも無愛想な顔なのに驚きました。