2012年12月19日水曜日

ポチのこと <ライネケ院長>



ポチが逝った。

2012年12月17日卒 
享年16才


12月17日、月曜日、朝7時過ぎ、目が覚めて、階下の伊予ばあちゃんの食堂の前、エレベーター入り口のところに、段ボールの箱にいれて寝かせていたポチをのぞきに行った時は、まだ、胸が動き、足を動かしていた。



8時半頃、再び見に行くと、動かず、息がなくなっていた。
伊予ばあちゃんに知らせて、彼を抱き上げ、箱にいれてあった汚れた新聞紙を換えてやり、ティッシュペーパーで、汚れた彼の口元を何度も拭いてやって、また、箱に寝かして毛布を掛けてやった。

彼の体は、まだ少しあたたかく、硬直していなかった。
ついさっきまで、頑張っていたのだね。
とうとう、死んでしまったんだね。お前の体はここにあるけど、お前はもういない。
もう苦しまなくていいのだね。
えらかったね。
よしよし。

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ポチは17年前、老ライネケこと、伊予じいちゃんがなくなって、松前のおうちに独り残る伊予ばあちゃんがさびしかろう、というので、Aさんが連れて来てくれた犬だ。柴犬の血を引く雑種の子犬で、妙に胸が厚くて、背中が平らな、砲弾型の小型犬だった。

十年くらい前、元気だった頃のポチ
ある日、我が家にもらわれてやって来た。
ポチ三世ということになるかな。
大した病気もせず、十数年間にわたり、ずっと伊予ばあちゃんを守り、なぐさめてくれた。
くるくるりと巻いた尾っぽが彼の特徴。
ロナはいなかったし、
リフォームする前の我が家の裏庭は
彼一人のテリトリーだった。
くるくるりと巻いた尾っぽが特徴で、よく吠え、我が家の庭を独り占めして、あらゆるところにオシッコをかけて回り、穴を掘った。
柴犬の血を引いていた。
六年前、医院をリフォームして、彼が自由に走り回れる空間がなくなったので、母屋に放し飼いすることになって、この六年間、今度は母屋を留守番してくれた。

伊予ばあちゃんが、ずっと、一日一回、餌と水をやりに、母屋を往復して、ポチの様子を見ていた。ポチは、毎日、母屋の庭を走り回り、かぎ回り、いたるところに穴を掘り、目につくもの片っ端からオシッコをかけて、気ままに放し飼いの暮らしを続けて来たのだが・・・。

2、3年来、目も耳も悪くなったようで、愛想がよかった以前のような活発さがなくなり、小屋の中で寝ていて、呼んでも出て来なくなり、半年前から、後ろ足が不自由そうで、時々、痙攣しているのも目についた。

10日ほど前、母屋の近所から、ポチの夜泣きがひどくて、安眠妨害になるから何とかしてくれ、という苦情が来た。それで、ポチは再び、医院裏の伊予ばあちゃんの部屋の前のベランダに引き取られて来たのだった。

確かにポチの夜泣きは問題だった。夜昼が逆転しているらしくて、夕闇が迫ると泣き出すのだ。もういい加減に疲れて泣き止むだろうと思って、祈るような気持ちでいても、しつこく長く続く。そばに行くと泣き止むが、また泣き始める。彼には彼の事情があったのだろうが、近所迷惑を考えると、何とかしなければならない。

セルシンとかホリゾンとかいう薬
ジアゼパムというのが薬物名
抗不安薬だが、眠り薬みたいによく使われる
ヒトには、1、2錠で十分だが、
10キロしかないポチには3錠くらいやった。
それで、5時間ほどは、おとなしく眠るようだった。

近所の犬猫病院に相談すると、要するに一種の痴呆なのだと言われ、マイナートランキライザーを処方された。数錠飲ませると、寝てしまって、静かになる。でも、一晩は持たないみたいだった。鳴き声が外に漏れないようにと、深夜は、エレベーターの中に入れてみたりした。こちらも睡眠不足になった。

あまり汚くて、情けないので、思い立って、ネコパコと二人で、風呂場に彼を入れて、湯をかけて、石鹸で泡だらけにして洗ってやった。普段は水をいやがる彼が、大した抵抗もせず、湯をかけられ、ドライヤーで乾かしてもらっていた。その晩は、おとなしく眠り、伊予ばあちゃんが、ポチのこんなに安らかな寝顔を久しぶりで見た、と言ってくれた。


こんなすったもんだが、はたしていつまで続くんだろう、と憂鬱な気分でいた頃、突然、ポチは逝ってしまった。最後は意外に早かった。

願わくば わがおくつきに
植えたまえ 梨の木幾株(いくしゅ)

そのうち、何か植えてやろうね。
裏のびわの木のある庭に埋めてやった。

ネコパコが、近くの植草から、ローズマリーやセージ、ちょうど咲いていた黄色い花やポリゴナムの桃色の花を採って来てくれたのを、置いてやった。

数ヶ月経てば、緑の草が上を覆い、どこだか分からなくなるだろう。

住み慣れたポチの小屋を分解した。
廃品回収に出されることになるだろう。

伊予ばあちゃんの住まいの前のベランダに作った柵とポチの小屋を分解した。
主がいなくなれば家は廃墟になり、ひとが死ねば、肉体は虚しい抜け殻になる。
「世の中にあるひとと住処(すみか)と、また、かくのごとし」だね。

彼がどこに住んでいたのか、どういう風に生きていたのか、どんな犬だったのか、思い出せなくなるだろう。そして、やがて、思い出す人もいなくなるだろう。

庭に向かって 空に向かって
なんども なんども
ポチ、 ポチ、
と呼んでやりたい
けど、
ポチはもういない

さようなら ポチ

ありがとう ポチ

あらら
あやつ、意外にあっさりとくたばっちまいやがったもんだ

おさびしくなりますな
旦那

これからは、おいらの天下だね
ゴロゴロゴロ






5 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

<ネコパコ>
夜啼きにはまいったな いやはや
このままでは身体が持たないと思ったよ

今回ネットでいろいろ勉強しました

老犬の夜啼きは痴呆の一症状
痴呆は日本犬それも柴犬や柴ミックスに圧倒的に多い
ぐるぐる旋回行動をとる
どれもこれもどんぴしゃでしたね
ポチは私とあんまり相性良くなかったのですが、できるだけの事はしてやりたいと思いました
犬も猫も人間も年取れば皆おんなじですね
せつないですね

匿名 さんのコメント...

あまり賢くはなくて活発なのが取り柄だったなぁ
やっぱりいなくなると寂しいもんだね
天国で走り回ってくださいな ポチ

黙祷

Haruno

匿名 さんのコメント...

天国の庭も穴掘り放題だといいね。
天国でも、ご飯はいつも一種類大袋入りなのかな?
ゆっくりおやすみ。
chica

匿名 さんのコメント...

たぶん穴掘り過ぎて雲突き破ってしまうでしょう。

gama

ライネケ院長 さんのコメント...

<ライネケ>
ChicaもHarunoも元気か?
明日は我が身かもしれんな。ポチの最後を見ていて、つくづく、人生の悲哀と無常を感じたよ。

ポチの餌は、伊予ばあちゃんのおつかいで近所のメディコに取りに行って、10kgが980円とかだったというのに、ロナは3kgが4000円以上もするのをやっている。えらい違いだな。それでも、文句一ついわず、ありがたく飽きもせず食べていた。不憫な奴だったよな。

やっぱり、どっちかというと人生は喜劇だな。