2018年4月10日火曜日

ペラペラヨメナ <ライネケ>

いつだったか、Chicaが持って帰ってくれたペラペラヨメナを植えておいたら、庭の隅で咲いた。いつの間にか、ずいぶん増えているようだ。

どこにでもありそうな雑草
中央アメリカ原産の帰化植物だそうだ。
道端になんとなく生えていて、そこいらを歩いていて視野に入っていても自分をとりまく世界の一部として、気にもとめないで見ているような草花だ。
我々の世界の把握のありようって、その程度のものなのかもしれんな。

朝日の中で
白さが目にしみる
今は白い花なんだが、やがてピンク色にかわるそうで、白旗は源氏、赤旗は平家というわけで、源平小菊って呼ばれたりするらしい。ペラペラヨメナっていうのも、ちょっと気の毒な気がするけど、源平小菊だとずいぶんいかめしく感じる。

鈴木祥太さんによる
彫金のペラペラヨメナ
本物のペラペラヨメナの株と一緒に、Chicaさんは、鈴木祥太さんの彫金作品を呉れた。とても良く出来てるんだが、ややくすんで見えるのは、わざとそういう作風なのか、それとも、店ざらしになってて、金属が古び、錆びたせいなのか。

鈴木さんの他の彫金作品を見ると、あまり色鮮やかなのはなくて、むしろくすんだものが多い印象なので、この作家の作風なのかもしれない。それにしても、花びらはもう少し白くても良いのではないか。しかし、葉の感じ、ひょろりと頼りなげに風に吹かれる茎の長細さ、ちょっと幸薄げな花のつけ方は見事に活写されている。

「こっちにおいで、ゴロちゃん。
ミルクを分けてやろう。」
お天気がいいので、草刈りしたばかりの屋上で、外出中のネコパコが作って行ってくれたサンドイッチとホットミルクの昼食を食べた。向こうでゴロフクがうろついている。

食後の珈琲を飲み、
枯れ草の下から、春の緑が生い出でて、
土を覆いつつあるのを見る。
うまく入ったコーヒーは、ミルクを入れると綺麗な色になる。
海の向こうの国の大詩人は、"Splendor in the grass"(草原の輝き)という米国映画の中で引用された同名の詩で、草原の草には輝やける壮麗さを、花には栄光を見出し、それらが失われても、 その奥に強靭さが残っていると詠った。かの国の人々は、神の恩寵である現世の多様さの裏に神の国の永遠の栄光を思い、雄々しく困難に立ち向かう強さを称えるのだ。

今、咲いたばかりのペラペラヨメナの花や若葉の瑞々しさに比べると、鈴木氏の彫金のペラペラヨメナは、広大な宇宙の片隅で人目につかないささやかな生命の存在そのものを表現しているようにも思える。その存在の意味やその裏にある大いなるものではなく、それを賛美するわけでもなく、ただ、一種の共感と親愛をもって。

ところで、伊予婆さまは、3週間ほど、一生懸命、ネコパコが水やりやら何やら、頑張ってしてくれたおかげで、大分元気になった。いわゆる認知症とかいうようなものではない。ただ、昔のあの人を、あの人たらしめているように思えた強靭な意志力みたいなものが、失われつつあるのじゃないか、という気がする。さびしいけど。








2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

Thanks to the human heart by which we live,
Thanks to its tenderness, its joys, and fears,
To me the meanest flower that blows can give
Thoughts that do often lie too deep for tears.

詩はこの4行で終わりますね。
心動かされることによって、生きている事を感じるから
花も波も美しく見えるのでしょう。

仙人掌姉

ライネケ院長 さんのコメント...

<ライネケ>
原詩は、西欧の多くの詩がそうであるように、とっても長い作品です。私たち日本人の、和歌や俳句みたいな短いものに慣れた目には、途中で嫌になってしまう。

ごちゃごちゃ、隠喩やら比喩やら暗喩やら、使い回して、勘弁してくれ、と言いたくなってしまう。
漢詩なんかは、あんなには長くないし、起承転結みたいな構成がはっきりわかるので、理解しやすい。
引用の「the meanest flower that blows」というのだけでも、meanest ってmeanの最上級だけど、このmeanってのは、とか、blowsのblowというのは、blossamとかbloomという意味なんだ、とかなんとか、とても我々一般的日本人の手に合うようなもんじゃありません。私は最初、風に吹かれて揺れるという意味かと思ったんだけどね。うっかり、恥をかかないですんでよかった。

英文学専門で英国留学までした夏目漱石は、自分はずいぶん熱心に英語を勉強したけど、英文よりも漢詩の方が、遥かに情緒が理解できると言ってます。彼は英国留学でノイローゼになってしまったくらいだ。多分英文学を好きになれなかったんだろう。

でも、あの映画はさすがに名作で、ハッピーエンドにならず、万感の思いを胸に秘めたまま、淡々と別れを告げた二人がそれぞれ別々の人生を歩んでいく、という人生の実相が描かれて、見事でした。題名の「草原の輝き」って訳は、いろいろ意見はあるようだが、よかったんじゃないかな。

この部分は、live-give, fears-tearsと脚韻を踏んでますね。

それと、この鈴木さんという人の作品であるペラペラヨメナを、貴女はどうして買おうと思ったのか知りたいもんだね。