夜半、陸風が海辺に張った天幕を静かに通り抜けた
ここは輪島の袖ヶ浜
日本で千枚田の残る、数少ない土地
松の木が冬の烈風に耐えかねて、吹き流されるように育つ。
こんな厳しい土地に、どうして人は暮らすのだろう。
そして開けた土地も無く、ひとたび塩水を被れば
枯れるような田畑を耕してきたのだろうか。
長い年月を経て伝承され、築き上げられた技は
ただの生計手段の域を超えている。
(石川県輪島漆芸美術館にて)
土地と伝統というシガラミの中で、個を殺して生きなければ
ならなかった人達の、唯一の自己顕示がこの技の頂だろうか。
がまがえるにはわからない。
ただただ感心するばかりである。
そして、そらまめ号は渚ドライブウェイをごとごとと走っていった。
途中釣糸を垂れたりするあたりが、自動車旅行の余裕である。
さあ、金沢の街が近い。
がま