2013年2月16日土曜日

がまぐるま はしる

春一番が関東平野の端にも吹き荒れた、ある晴れの日。
がまは弁当箱のような可愛らしい私鉄に揺られて出かけていた。
引き籠りのがまが こんな知らない街をあちこちキョトキョトと
見まわしながら歩いていくのには、それなりのわけがある。

元来、彼は「必要最低限こそエコの真髄。」などと云って、
着る(たまに。)・寝る・食べる の他は一切気を遣わない生活に励んできた。
彼の云うエコとは、あくまで依怙贔屓、もしくはエゴイズムのエコであって、
まったく地球のことなぞ想ってもみないわけだが、
これまで概ね問題なくやってこられた。

しかしここ最近になって、この孤高の沼の主には
あれこれと厄介事が降り掛かるようになってきた。

まず、彼がそこいらを裸足でペタペタと歩いていると、兎さんやら
キリギリスさんが寄ってたかって、口うるさく「シャカイジンなら…」
などと呼び止めるようになったこと。
シャカイジンというのが何を意味するのか、がまには良く判っていないので、
「ふうん。ズルり(鼻をかんだ)。」などと生返事をして誤魔化しているが、
まったく小五月蠅いこと甚だしい。

次に、彼が森でどんぐりなぞを拾って歩いていると、お猿さんが寄ってきて、
「君キミ、すこしはわきまえたまへ。オトナはそういうことはしないのだよ。
みんなと仲良く協力しあって柿でも育ててはどうかね。」
なぞと小賢しいことをぬかすことが頻々とある。

彼は、オトナという言葉も、なにかの食い物だろうくらいに思っているので、
「どうも、それは不味そうだねえ…」といって、
薄ぼんやり相手を見返すばかりである。

しかし、こんなことが度重なると、いい加減がまもジリジリとした気分になってくる。
「あー、めんどくさ。」

そういう経緯があって、彼はその人生で初めて金(キム。大阪在住。
たぶんお婆ちゃんは大陸出身)にものを云わせることにした。
そして、金君の為した仕事の首尾を確かめるために、
春一番の吹く街に出掛けてきた訳であった。

 金君はかなりよい仕事をしていた。
「これなら連中の目も、声も届かないところへブイブイ走っていけそうだな。」
がまはおおむね満足したようである。

「安全運転よおおおし!」

がまがえるのエコイズムは死ぬまで治らないであろう。

2013年2月10日日曜日

徒然雑草

1月の末に厄払いに行ってきた。
そんなに真剣に神様にお祈りするほど、お前は信心深かったのかと問われると
答えはノンなのだが、基本的に「他力本願」型の人間であるので、
機会さえあれば、抜け目なく、誰かにすがってみたり、たかってみたりするのだ。

という訳で、5000円というと、我が家では奮発したランクに入る金額を
ぽんっと出して、怪しい煙にまかれ謎のお札を貰って帰ってきた。
帰り道に友人と二人して、
「ここで幸先が良くなけりゃ、厄払いなんぼのもんじゃい」と言う事で
おみくじをひいてみた。
ちなみに境内のおみくじは既に閉店していた為に、門前の怪しい易者のおみくじである。

さて内容はいうと

貴方の性格
貴方の性格は正直であって、才能もあり、友情に厚く、他人の信用を受ける素質があるが、
概して旺盛な独立心を持って居る為に、他人の世話になる事を好まず、一人立ちを仕様として
少々アセリ気味になるのが欠点である。

自分の欲望に忠実なのを、性格が正直と表現してくれているのだろうか。
約10年を悠々自適の1人住まいで過ごしている訳だが、これは独立心の表れか?
他人の世話になって、骨肉をしゃぶりつかせて頂けるものなら、
今晩にでも荷物を纏めたいと思っているのだが、そんな考えが「アセリ気味」という事なんだろうか。

表面剛気の如く見られるが、内心は内気で多少優柔不断と云った傾がある。

フレンドリーなのは表面上だけで、実は1時間経過しても2時間経過しても目が合わない
こんな状況をただの内気と言っていいものか。

と、ここまで書いて飽きたので、おみくじの内容は以上とする。
信じるも信じないも自分次第。
さて、今年はどうなることやら。

まとまりが完全に尻すぼみであるが、それもまたよし。
どっとはらい。
chica



2013年2月5日火曜日

なんとか元気 <ライネケ院長>

何だかんだと、おいらを病院に連れて行っては、心配そうな顔をして、面倒なことをいろいろやってくれるのはありがたいんだが、俺は元気だぜ。ほおっといてくれればいいんだ。

なんだ
何か
おいらに用でもあるのか?

この2、3年というもの、妙に吐き戻したくなって、床を汚してしまうことが多かったんだが、まあ、ネコに毛玉吐き戻しは、当たり前だからね。それにしても、最近、食欲がなくって、自分でも困ったもんだ、と思っていた。

一つには、以前から言われてたんだが、歯石が随分溜まっていて、そのうち全身麻酔して、歯石を取ろう、という話があったので、溜まった歯石のせいで、口内炎を起こして、痛くて食べられないんだろう、という話になったらしい。

それで、近くのM犬猫病院に半日入院して、レーザーを使って歯石除去してもらった。そのついでに採血して、ヒト並みに検査をしてもらった。

おいらに
かまうんじゃねえ。

そしたら、白血病ウィルスの抗体は陰性だったんだが、なんと、ネコAIDSウィルスの抗体が陽性だと判明したわけなんだ。外飼いの猫は、けんかやらして、噛まれたり、引っ掻かれたりして、感染することが多いそうだ。じゃあ、仇敵クロタのやつも怪しい? しようがないな。その分、外の世界を存分に楽しんだんだから。

で、年末から一月にかけて、まるっきり食欲がなくって、おいらの体重は、以前は最高で6.5キロほどで、ゴージャス大型白猫の風格を誇っていたんだが、それが、ここんとこ、5.2キロ以下になっちゃった。

変だな
何だか
力が出ねえ。

一時は、階段の上り下りも、何だか力が入らなくて、よっこいしょ、うんこらしょ、っていう感じだったもんで、ライネケ父もネコパコ母もいろいろ心配して、この騒ぎさ。

ひとの食事中に
勝手に
写真なんか撮るんじゃねえ。

まあ、いろいろあったけど、しばらく、毎日、リンデロン0.5mgとビブラマイシン25mgを飲むことになった。そしたら、今は口の痛いのも治まったみたいで、結構食べる気になって来た。薬を飲まされるのはいやだけどな。

とにかく、皆さん、世話の焼き過ぎ。ちょっと食べてやると大喜びし、食べないでいると、ひどく心配する。たかが、ネコ一匹のことに、大のオトナがやきもきするんじゃねえ。みっともねえじゃねえか。

やれやれ
少しは元に戻ったかな?

そうさな。大分元気になったかな。ライネケ父がいつも言ってることなんだが、「だいたい元気、というのを、元気と言うんだ。」というのに賛成だな。完璧な元気なんてどこにも誰にもない。

ひとの顔を
あんまり
見るんじゃねえ。


心配しようがしまいが、早かれ遅かれ、終わりは来る。
その時はその時さ。

そろそろ、春が近い。