ちっちゃなヨットの話は何回目かな。
ライネケ院長は愛媛県は松前町という松山市と伊予市の中間のちっちゃな海辺の町に住んでいて、住まいから浜辺まで、自転車で8分ほど、車だと5分くらいで着いてしまう。
北海道の松前は「まつまえ」だが、この町は「まさき」と読むんだ。この町には、ずいぶん昔から、東洋レーヨンの工場があって、今は、飛行機の素材になる炭素繊維を作っているんだって。
10月25日土曜日、朝6時頃、目覚めた。ネコパコ事務長はまだ眠ってる。今日は、休診日なのさ。日祝日と第2・4土曜日は休診。だから、今日と明日は二連休。怠け者の皮膚科医なんだよ。一方では医療崩壊が叫ばれているのに、いいのかね、こんなにのんびりしていて。
昨夜は雨が降ったみたいで、今日も空は薄曇りだ。1983年製のゴルフカブリオのバッテリーを換えたばかりなので、そおっと、下に降りてエンジンをかけてみる。すごく好調になったというわけでもなさそうだなあ。ついでに、ちょっとそこらを一巡りしてみるか、というわけで、車を出す。
早朝の街のガソリンスタンドの旗が風に吹かれている。浜辺ではどんな具合かな? 塩屋の浜まで足を伸ばすと、吹いてるというほどでもないか。と思ったら、おお、結構吹いてるじゃないか。急いでうちに帰って、メルセデスに舟を積む。上に飛んで上がって、Harunoのくれたセーリング用のズボンとシャツ、ヤッケを着込んで、防水パックに携帯電話と免許証をいれて首からぶら下げて出発。時間は、7時過ぎ。ネコパコはまだ寝ている。
また、黄色いアクアミューズと白い帆を巻き付けた長いマストを上に積んだメルセデスで、塩屋の浜に向かって急ぐ。浜に沿って走る直線道路に車を停め、マストや艤装品を入れた袋を波打ち際に運ぶ。続いて、車の上から、舟を下ろして、舟の先っぽを小さな台車に乗せ、艇尾を持ち上げて、ゆるやかに下る長い砂浜のスロープを、波打ち際まで一生懸命押して行く。
波打ち際で、舵と操舵のための延長桿を取り付ける。マストを立て、帆綱を取り付ける。帆を張ると、風で陸の上の舟が傾ぐ。1〜2m/sというところかな? 北西の風だ。海上には早朝らしく漁船が数隻見える。10月の末だ、大分寒くなった。さすがに、うるさいジェットスキーもいない。彼らがいないと気分がいい。
満ち潮らしく、寄せ波が強いが、腰まで潮に立ちこんで舟を押し出す。いよいよ、出発だ。
帆綱を引いて、風を横に受けながら、沖に向かおうとする。初心者の悲しさで、すったもんだするが、陸からゆっくりと離れて行く。沖に出るにしたがって風が強くなって来た。いい気持だ。
沖合500m程で、遥か北の方向に隣町の今津の港の赤い灯台がちっちゃく見える。ここから、西から北に進路を変えて、重信川の河口を目指す。2mくらいの北北西の風が左前方から吹いている。のんびりと潮の流れが舵棒を持つ手に伝わり、風をおでこに感じながら、北上する。
重信川の河口に近づくと、河の流れ出しのために潮流の方向が変化するのを感じる。風向きも変わって来たようだ。ヨットっていうのは、真向かいには無理だけど、斜交いなら、風上に向かって、進むことができる。だから、風上に目標がある場合は、ジグザグに進んで目的地に達するわけだ。
それに、潮流がある。潮流に逆らって進む場合は、余程うまく風が吹いて、その風を利用しながら進まねばならない。瀬戸内海は、満ち潮、引き潮により、潮流が逆転する。潮流は時間帯によって予想出来るが、風は常に微妙に向きが変わり、急に吹いたりやんだりする。なかなか複雑なもんだ。もちろん、潮流については、インターネットで潮流表を見て、知ることができる。
ライネケ船長は、時間ができ、気力体力があれば、海に出かけるのであって、ちゃんと潮流や風向きを充分に調べて出かけるというようなことはしない。要するに、勝手、気ままなのであって、いい加減なんだよ。その内、泣きを見るかもしれん。その時はその時だ。
さて、うす寒い曇り空の下、重信川河口を横断する。この下は水深何メートルあるのやら。気持悪いから考えるのはよそう。河口対岸を過ぎ、隣町の今津の港の突堤とその先端にある赤い灯台が大分はっきり見えるようになって来た。今まで、二回ほどあの灯台のところまで行って、風がなくなったり、潮の流れが逆になったりで、帰れなくなって、一度は、今津の港に逃げ込んで、ネコパコ事務長に頼んで、連れに来てもらったり、もう一度は、近くを通りかかった釣り船のモーターボートに曳航してもらったり、因縁の灯台だ。以来、あの港には寄り付きませんとお約束した禁制の場所でもある。
今日は、風もいいから、あの灯台のところまで行って帰って来られるんじゃないか。何かがささやく。またしくじったら、どうしよう。う〜ん、ネコパコ事務長のあきれ顔が。何度か反転して、充分帰れそうな風と潮であることを確かめて、北上を続けよう。
とうとう、灯台の前を通過した。今津の港の奥も見える。遥か東北に見えるのは、松山のお城山かな。それとも石鎚かな。携帯電話機のカメラで写真を撮るが、舟があっち向いたりこっち向いたり、帆が邪魔したりで、なかなかうまく撮れない。潮が変わらぬうちに、さっさと今津港到達の証拠写真を撮って、今度こそはまた我が町の浜辺に戻らなくては。仏の顔も三度までっていうからな。潮時とはうまく言ったもんさ。
薄暗い空の下、今津港湾の対岸には、吉田の飛行場、さらに遥か北に見えるあの島々は、興居島(ごごしま)、左前方は中島かしらん。
さあ、いよいよ、帰ろう。艇首を南に向ける。舟の方向を変えると、帆が風を受ける面が変わって、帆が回る。うっかりすると、帆を支える下辺の棒で、おでこを打たれたり、入れ替わる帆の下をかいくぐって、舟の反対側の舷に身をうつすときバランスを崩して、海に落ちたり、舟ごと転覆したりする恐れがある。うっかり落水すると、ライフジャケットをつけていても、今はもう海水はかなり冷たいし、舟にうまく這い上がるのに何回も失敗すると、体力を消耗して、舟にしがみついて、漂流する羽目になる。想像するだに気分が悪い。おそろしや。
また、渡って来た重信川河口に向かって南下する。以前、帰れなかった時は、どうやら今津港湾から、流れ出しがあるようで、舟を南に向けても、左にある灯台がいつまで経っても同じ場所に見えて、進んでくれず、本当に困った。今回はちゃんと舟が進んでくれる。
おや、カモメが水に浮かんでいる。寄って行ったら、飛んでっちゃった。もう少しで、重信河口に差し掛かる。
やややや・・・。いつの間にか、風向が変わっている。どうやら、南東から吹いてくるようだ。すなおに南に進んでくれない。ジグザグに進みながら南下する。出発点を左手に見ながら、東洋レーヨンの工場を過ぎ、松前港の突堤の灯台が見えるところで、出発点を目指す。潮の流れが微妙に変わり、風が弱って来た。
気がつくと10時半。なんと、朝飯も食べずに、3時間以上も海の上をぶらぶらうろついていたわけだ。「この野良狐が、いったいどこで遊んでいたの?」誰かの声が聞こえて来そうだ。
波打ち際に戻って、今日の遊びはおしまい。また、浜の砂のスロープを艇を運んで、車の上に上げ、ライネケ邸に帰ったら、水道水で舟や艤装を洗って、片付けなくちゃならない。こんなこといつまでやってられるのかな。年内にもう一度くらい出艇したいもんだ。
5 件のコメント:
<ネコパコ事務長>
寝ている、寝ていると二度も書かれた私としては、最初は確かに寝ていましたが、「二度目は起きておりました」と言っても本質的には何の気分転換にもならないので、ここでは、はっきりしていることだけ書かしてもらおう!!
今後は何時間も連絡無しに朝ご飯に遅れるな!!
プン、プン!
<ライネケ>
すいません!
ご飯までには帰るように、以後、気をつけます。
遅れるようなら、連絡します。
重ね重ね、ご心配かけて申し訳ありません。
あなた様の忠実なる羊飼いライネケ より
ガガッピー…(マイク)
あ”-、あ”-、そこの二人、今すぐグダグダをやめて出て来い。
お前たちは完全に包囲されている。
息子や娘が心配しているぞ。
それになんだ、この超凝った記事は。
サーバーが悲鳴をあげているではないか。
アクアミューズ、羨まし過ぎだ。
溺死に注意、溺死に注意!
キコキコ(三輪車で去る)
sorneko
いや、楽しんでらっしゃるならいいんですよ。
いいんですけどね、
。。。。。。。。。。。。。。んんん。。。。。。
やっぱり心配でもあるんで。とりあえず
どこ行くかだけはお互い残して行く方向でお願いしますだ。
今週は結婚式に出席します。
久しぶりに振り袖だ!わーいわーい。
また私も更新します。
chica
久しぶり〜
元気にヨットに乗ってらっしゃるようで結構ですな。
僕もまえカヌーのボランティアで海にいってきましたけどまだ海の水は温かいですね。外は寒いけど。
まあ、今から波も風も強くなる季節だから気をつけて乗ってくださいな。
Haruno
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