2015年11月12日木曜日

諸君も気をつけたまえ! <ライネケ院長>

おいらは20才ころから、ずっと、コーヒーを生豆から自家焙煎して、飲んできた。淹れ方は、ネルドリップ、サイフォン、カリタやらメリタやらのペーパードリップ、いろいろ試してきた。

おおむね、結論としては、ドリップ式なんだけど、ネルの袋によるドリップは、ネルの扱いが面倒な上、ある程度ネルを繰り返し使うと、ネル地の目にコーヒーの微粉が詰まって、それが変性して、不純なにおいのもとになってしまう。
それで、この数年は、トキワ工業の「ネオ・ドリッパー」という製品を重宝してきた。これは、コットンの不織布の紙をつかったドリップ用袋だ。

トキワ工業の「ネオ・ドリッパー」

左上の袋の口に、その下のプラスチックの枠を挿し込んで、右上のようにして、ドリップするわけで、10枚入りにプラスチック枠がついて170円ほど、枠なしペーパーだけ20枚入りが250円。フィルター1枚が12円ほどで、しかも、一回限り使い捨てでなくて、6回程度繰り返し使える。非常に使い勝手がよくて、しかも、抽出結果はきわめて良好、おまけに安価だし、コットンだから環境にやさしい。最高だと思ったし、実際、おいしいコーヒーが安定して入れられるので、この数年間、安心して使ってきた。

最初は、松山市のスーパーで枠付き10枚入りがあったので、それを買っていた。昨年そのスーパーが倒産しちゃって、経営母体が変わると、この製品を扱わなくなってしまった。しようがないので、東京渋谷の東急ハンズで、Chicaに頼んで、20枚入りを5パックまとめ買いしてもらって、この一年はそれでやってきた。

ところが、そろそろ、残り少なくなってきたので、また、買っておかなければならない。実は、トキワ工業は、愛媛県の四国中央市土居町にある会社なんだ。ところが、昨年9月ころ、直接会社に照会すると、松山周辺地区はおろか、四国内では小売している店舗はないというのだった。
最近、松山にも東急ハンズが出来たので、問い合せてみたら、今は、東急ハンズでは、この製品は扱っていないんだ、という。去年まで扱っていたのに、おかしいなあ。

しょうがない、何でもインターネットで買える世の中だ。というわけで、ネット上を検索してみたら、あった、あった、ありました。それもおもいっきり安くて。

これや、これ!
おまけにえらく安いじゃないか!!

10枚入りにプラスチック枠一個つきで、たったの89円だという。定価のほとんど半額じゃないか。しかも、送料は無料だと書いてある。
もうこれしかないっ、て思ったな。

えらく手広く、なんでも扱う店らしい。
楽器まで売ってる。
全て一律20%OFFというのもなんだか妙だが。


よし、これだ。
10枚入りを20パック注文すれば、200枚のフィルターが手に入る。一枚を3日間使う計算だと、600日、約2年持つことになる。これしかない。

今、深夜0時前、早速、注文手続きをする。

名前、住所、電話番号、メールアドレスと個人情報を入力し、いよいよ、クレディットカードによる支払いページに移る。
カード番号、有効期限、そして、セキュリティコードを入力し、支払いボタンを押す。
・・・・
ところが、「認証が許可されない。再度試行しなさい。」と言ってきた。
それで、あらためて入力しなおして、再度支払いボタン。拒否。
これをなんどか繰り返して、とうとう、あきらめて、ネコパコの家族カードで、やってみたら、今度は支払いが終了できて、注文の確認が来るのを待て、というメッセージが出た。
「注文取り消し」とか、
「買い物バスケットを空にする」
とかいう機能が付いてない。
「状態」っていうのが、全部 paidになってたら焦るだろうな。

なんだか、妙に心配になって、注文履歴ボタンというのがあったので、確認してみると、
全部で9件もあって、最後のを除いて、注文の状態というのが「rpunpaid」となっている。そして、最後のだけが「rppending」だと。どういう意味??

早速、Googleでけんさくしてみると、いきなりヒットしたのがこれ・・・。

な、なんだ、こりゃ?!

ネ、ネット詐欺 !!??

こういうサイトは中国あたりに本拠があって、それっきりになってしまって、品物が届かなかったり、多額の引き落としがあったりするのだという。それで、カードは停止して、フィッシングを警戒して、切り替えるのがよいのだという。

もっともらしいが、
電話番号が書いてない。
会社概要というページを見てみると、長野県にあって、店舗責任者やらセキュリティ責任者とかいう名目で日本人名が二人分書いてある。会社の住所をグーグルで調べてみても、そのような会社がある様子がない。連絡先はinfo@---.comというのみで、電話番号がない。やっぱりこれは怪しい。


もう0時をとっくに過ぎている。おいらのカードだけでなくて、ネコパコのカードも使ってしまってる。床に就いたばかりのネコパコにも声をかけて、どうしようと相談するが、どうしようもないよ。すぐに、カード会社の24時間対応の窓口に電話したら、はじめの8件は支払いはされてなくて、最後の1件は、まだ分からないという。どうなってるのかどうしたら分かるのか?と訊くと、電話係の嬢ちゃんは、相手先の会社に訊くしかないとかのんきなことを言う。電話番号は分からないし、夜中だしどうしようもない。不安なままで明日考えることにして、わしは寝る、と言って、床に就いたけど、寝苦しかったよ。

翌日、カード会社に電話したら、女性のオペレーターらしき嬢さんが調べてくれて、8件の支払い業務が上がってきて、いずれも支払い停止処理になっているという。あと一件あるはずだが、それはどうなんだ、と訊いても、現時点では、それは上がってきていませんから、後日、上がってきたら分かります、とか、他人ごとみたいに言う。そりゃそうだ、彼女にとっては他人ごとだよな。

それから、1時間もしないうちに、カード会社からまた電話がかかってきて、今度は男性の声で、合計9件の支払い手続きがありましたが、この販売会社は疑われていて、すでにブロックがかけられていたので、支払いはされないようにしてあります、と言ってきた。それで、現在では実害はないが、カードは切り替えなさいという指示だったので、それに従った。

あと2週間ほど、カードが使えない。

よく考えてみれば、最初からおかしかった。
当方情報の入力欄で、住所の様式が日本式でなく、まず番地から始まり、区、村、町、市、県の順番で、おまけにJapanなどと勝手に記入されていた。
なんと言っても破格の安値だった上、送料無料というのが、おかしい。

さらに、まだ、後日談がある。

こういうゴタゴタがあったあと、安いのを探すのはやめて、製造元のトキワ工業から直接販売で買おうと思って、メールで注文を出したら、トキワ工業の担当者から、「ネオドリッパー」は本年の4月に廃番になっちゃっている、と返事が来た。

すでに半年以上前から、この製品は市場には出回ってないんだ。じゃあ、あの販売会社はやっぱりインチキだったんだ。

   教訓一 安物買いの銭失い ウマイ話には裏がある
   教訓二 夜更けてから、ややこしいことはするな
   教訓三 初めての会社は、ネット検索してみること 
   教訓四 結局、正攻法が一番確実で得

トキワ工業の担当者が言うには、廃番後、この製品についての問い合わせが結構多くて、会社としても反響に驚いているそうだ。そして、手元に残っていた20枚入りのパック2個と水出しコーヒーパックってのを送ってくれた。素晴らしい対応で、うれしいね。




コーヒーとか嗜好品とかいったものに、あまりに、こだわるのは君子には似合わしくない、というのがおいらの考えだ。コーヒーに凝りだした頃には、一日7,8杯も淹れて、さまざまの銘柄の豆、浅煎りから深煎りまで多様な焙煎度、半量から数倍量までの粉を使ってさまざまの濃度の淹れ方、組み合わせを、おもしろがって試したが、ある日、粉が足りなくなって、薄いけど淹れてみたら、とても美味しかった。以来、何ごとも凝れば凝るほどややこしくなって、ほどほどでよいし、どんなコーヒーもそれなりに美味しい、缶コーヒーはもちろん、インスタントでも、うまい時はうまいと思うようになった。



おいらは、砂糖を入れて、あまりかき混ぜないで飲んで、最後の方に残る甘くて苦い数滴がほんとうに美味しいと思う。おいらの人生の最期にそんな数滴が残ることを祈るよ。


コーヒー、もう一杯
いかが



皆さん、元気でな。