「朧月夜」
作詞 高野辰之 作曲 岡野貞一
菜の花畠に 入日薄れ
見わたす山の端 霞ふかし
春風そよふく 空を見れば
夕月かかりて にほひ淡し
里わの火影(ほかげ)も 森の色も
田中の小路をたどる人も
蛙(かはづ)のなくねも かねの音も
さながら霞める 朧月夜
宇和島近くの吉田町付近 国道沿いのみかん山を越えて、瀬戸内海を望む |
文語混じりの旧仮名遣いだし、「にほひ」なんて、匂いも臭いも書き分けなくなった現代では、文部省唱歌なんて縁遠いものになったのだろう。「にほひ」は嗅覚に関する言葉ではなくて、本来は、嗅覚で感じられる香りやにおいだけでなくて、色合い、美しさ、余韻、魅力などといった視覚、触覚で具体的に把握されないような、雰囲気で伝わるような感覚を表す微妙な美しいやまと言葉だ。 「におい」でなくて「にほひ」。響きだけでなく文字面の視覚的にも空気に溶け込んで拡がる何かが感じられるようだ。
南予まで何しに行ったかというと、実は、みかんを買いに行ったのだった。
愛媛は、柑橘類が豊かで、最近はますます種類が増えているようだ。
安物買いのライネケは、例によって、小玉の安物を大量に買った。小さくて沢山あるのは、南柑20号の小玉、わけありB級品とかで、これだけで300円だ。
あまり安いと、みかん農家さんに気の毒な気がするくらいだ。その安物を買うのがライネケなんだが。
大ぶりでヘタを取り巻くように盛り上がったのは、「デコポン」で、「清見」と「ぽんかん」の交配でできたもの、色が浅黄色のは「媛小春(ひめこはる)」で、「清見」と「黄金柑」のかけ合わせ、といった具合だ。一番右側の二個のつやつやオレンジ色のはご存知「伊予柑」。
今回のお目当ては「媛小春(ひめこはる)」で、外観に似合わず、むきやすくて、内袋も薄く、甘くて、適度に酸味もあって、香りがいい。これは人気が出そうだな。
今の柑橘類は、複雑怪奇な交配に次ぐ交配の結果産物で、柑橘農家関係者の努力にも頭がさがるし、美味しいのは結構なことだが、これはとんでもない近親相姦関係の産物なのかもしれない。
とか何とか言いながら、腐ってはもったいないからと、ぱくぱく食べてしまっては、ネコパコに叱られるライネケなのだった。