3.11の追悼のため、世の中は、涙の日だったと思うが、ライネケとネコパコは、はるばる徳島に行った。
目的は「受審」。六段をもらってから18年、教士をもらってから15年が経ってしまった。それでも、44人中21番目。これで、上手だと受かり頃だけど、なかなかそう簡単ではないね。
早朝5時にネコパコと二人で出発。上分の分岐から徳島道に入り、徳島の道場に到着したのが、8時15分頃。すぐ開会式が始まると言うので、駐車場探しはネコパコにまかせ、急いで着替えて開会式に参加。そのあとは、七段審査は午後4時頃開始だという。6時間以上の長い長い待ち時間がある。
またまた着替えたライネケとネコパコは、再び車に乗って、国道55号を室戸岬に向かうことにした。昔、子ども達を乗せて、何度この道を走ったことか。阿南を過ぎ、新しいバイパスが出来ていて、ずいぶん変わってしまっている。「大菩薩峠」という偏屈もののおやじがレンガを積んで作っている喫茶店は、役所と喧嘩しながら、まだやっているようだ。
太平洋が見えはじめた。どこに行こうかね。ちゃんと審査開始に間に合うように帰らなくてはならない。室戸までは無理だ。そうだ、昔一度だけ行ったことのあるあそこに行こうか。
この天井に見覚えがあるかな。
牟岐という町にある「モラスコ牟岐」という貝類水族館だ。
どうして、ある種のある属のある生き物は、わざわざ、きまってこんな形になるのだろう。折れやすかろうに、長いトゲを張り出し、必ず、決まった巻き数だけ渦を巻き、それも決まった方向に巻く。わけもないのに、どうして、こんなピンク色や、緑色になるのだろう。もし、神がいて、そういう風に世の中を作っているのだとしたら、どうして、そういうふうにさせるのだろう。自然淘汰?適者生存? いや、それだけでは説明がつかない。自然は合理だけを選んでいるのでないようだ。
ヒトデの多くは、五角形のいわゆる星形だが、どんな形でも良さそうなものなのに、どうして、よりによって、きちんと五角形なんだろう。ミノカサゴは、敵を驚かすためにヒレを大きく広げるというが、いかにも装飾過多のように思える。彼らには、何か意図があって、わざわざ見せつけるがごとく、そうしているように見える。
水族館の外に出てみると、そこは太平洋だった。子ども達が巣立って行き、二人きりに戻ったライネケとネコパコは、久しぶりの晴れの日差しの中で、並んで写真を撮った。
牟岐の駅の近くで昼食を済ませて、徳島に戻り、審査を受けたのは、4時半過ぎだった。首尾はというと、甲矢は良かったけど、乙矢が的枠を蹴り出しておしまい。受験料と高速料金と燃料代と、単なる趣味にしては、随分金を使い、ネコパコにまで付き合ってもらって、はるばる片道280キロもやって来て、二本引いただけで、おりしも降り出した雪と強風の中を、二人は徳島道に乗ったのだった。松山着、8時過ぎ。「でんぷん」で夕食をとり、椿湯に入って、帰った。
我が家では、ロナさんが、身一杯からだを伸ばして、寝転がり、甘えている。全長80cm、尾の長さ35cm、体重6.5キロ。そうだ、まだ、子どもがいるのだった。
お前は気楽でいいなあ。