ライネケは、以前なら、年金生活の年寄り夫婦かなんかが、自然観察会とかいったものに参加して、草木図鑑を手に持って、熱心に、あれは何、これは何、というようなことをしゃべりながら、歩いているのを見ると、馬鹿じゃないか、くらいに思っていたのだが、ここ数年間で、えらく気分が変わり、こんなささやかな野の草花に目がいくようになった。まあ、細かしい草花の名前を覚えようというような気にはならないけどね。
去年11月末に、吉川に行った帰り道、三木東インターチェンジ近くの「風雅舎」に寄って、山野草の株を数株買って帰った。一株300円くらいだ。よく見れば、そこいらに勝手に生えているようなものなので、高いといえば高いね。
それで、屋上の芝生が枯れて、雑草が覆っている土の一部に穴を掘って、植えてみた。春になって花が咲くといいなあ、と思ってさ。おいらみたいのが植えて、はたして根付くのかな?
最近、ふと気がつくと、花をつけてるじゃないか! これは、サギゴケって言うんだそうな。
そして、これは、シンバラリア・ムラリス。白い花が可憐だ。
この景気のいいのは、宿根フロックス・ストロニフェラピンクって言うんだって。
ほかの4株は、何とか冬を越したようだが、まだ咲かない。ひょっとして、花の咲かないただの葉っぱだけの奴なのかもしれない。それはそれでいいだろう。もうしばらく待つさ。
このシンバラリアっていうのは、うちの自宅玄関の足下に、いつの間にやら、生えているのに似ているね。下に降りて、確かめてみよう。
おお、これも、よく見ると、花が咲いてるではないか。ただし、こっちのは紫色だ。単なる色変わりなのか、亜種なのか。いずれにせよ、愛すべきものだね。神は微細に宿るとは、よく言ったものだ。
外に出てみると、5年前に松山市内の廃屋の軒先からむしり取って来て、移植したツタが、板塀いっぱいに伸び広ごっている。ライネケとネコパコが、古い家をリフォームして、仕事を始めて、5年の月日が経とうとしているのか。
よくよく見れば、その先のところどころに、青葉が出かかっている。
いかなる有為転変にも関わらず、春はめぐり来るのだ。