ペソがうちに来て,かなり過ぎた。彼もこちらも大分くたびれて来たね。
ペソは、ホンダの原付スクーターだ。就職活動をろくにしなかったChicaは大学を卒業したけど、行くところがなくて,とにかく,植栽関係ということで,京都の日本庭園専門の庭師の所に丁稚入りした。
バスで通うのは不便で,あまり可哀想だっていうので,ライネケ父さんが彼女の所に様子うかがいに行ったついでに,滋賀のバイク屋で買ったんだったね。整備して,保険をつけて,12万円あまりだった。たしか,全額は出してやらなかった
ね。
ペソと後ろに見えるのはロナ
とにかく,あまり器用とはいえないChicaでも乗れるということが最優先条件だ。それなら,ホンダのスーパーカブだよって言ったら,あれはイヤだ,チェンジペダルの無いのがいいのだ,と言う。それで,滋賀の方まで探しに行って,デザイン優先でこれに決めたわけだ。ちょっと昔のラビットに似ていて,かわいいでしょ。
早速、彼女は,このスクーターに愛称をつけた。「ペソ」だって。なんで「ペソ」なのか分からないが,彼女はあっという間に,こういう風な愛称をつけるのだ。「ロナ」だってそうだ。この大胆さは、彼女のちょっと意外な特質だ。
あの頃のChicaは大変だったと思うね。劣悪な生活環境の中で,早起きと若い女の子には余り似合わしくない汚れ仕事と重労働。偉そうにするわりには,ちっとも尊敬出来ない親方のもとで,自分の未来の展望がまるで見えて来ない毎日。
Chicaさんは、きっと、そういう辛い状況の中で,自分の味方になって働いてくれるこの可愛いスクーターに,妙にひょうきんな愛称をつけてやることで,自分を慰めたのかもしれない,と思う。
めそめそするな,ペソよ,走れ。
働くこと一年間。この一年間の経験は今も役立っていることだろう。あの時を思いおこせば,大抵の事は我慢出来る,切り抜けられると思いたい。
なんと,Chicaさんは一転して,ちっちゃな植物園で働くことになった。なにごとも無駄にはならないもんだ。
それで,引っ越し先には連れて行ってもらえなかったペソは,愛媛に送られて来て,キツネコ家の一員になったわけだ。
ペソは,オートバイの好きなライネケの所有になり,医院の再開を待つ間は砥部の運動公園に行ったり,開業してからは,ライネケの往診の足になったり,時には,松山まで講演会のお供をしたり、ろくに手入れもされないまま,文句もいわず働いて来た。最近やっと2サイクルオイルを、多分4年ぶりに,補充しただけだ。
春の菜の花畑の前で幸せそうなペソ
さて,ある日,何かのはずみで思ったんだ。ところで,原付スクーターって、原動機付きとはいえ,自転車みたいなもんだから,自賠責なんて要らないよねえ。
自賠責,つまり自動車賠償責任保険っていうのは,自動車で走っていて事故を起こして,人を傷つけたら,最低額の保証ができるために、日本国内のどんな自動車にも,国により強制的に加入させられている保険の事だ。
原付と自賠責で、Googleで調べてみたら・・・。エエエッッ!! 要るじゃないか。もし,入ってなくて,走っていて捕まったら,
お,お,おっかねえ!!
と、と,ところで,ペソは自賠責に入ってたっけ。そりゃ,Chicaさんが買った時に入ってたはずだよね。でも,あれ以来,自賠責なんて考えたこともなかったぜ。
早速,ガレージのペソのもとに走って行って,見ると,・・・・。
やややや!駄目じゃん。もう切れてるじゃないか。おいおい。
そういえば,Chicaさんから送られて来たペソを松前町役場に乗って行って,名義変更して新しいナンバープレートをもらった時,町役場の駐車場で,ナンバーから,あと1年残っていた自賠責のステッカーを剥がして,新しい松前町ナンバープレートに貼り換えたんだったよ。
昨日,近くの自転車屋さんに行って,ペソの自賠責保険2年分を払い込みに行き,ステッカーをもらった。8790円だった。これで二年間安心して乗れるわけだ。二年後,忘れず更新しなくてはね。
久しぶりに,ナンバープレートをきれいに拭き上げ,平成23年11月まで有効の新しいステッカーを貼った。これで,お巡りさんの前でもびくびくしないで済む。
お巡りさん,ご苦労様。何か、僕に御用ですか?
最近、始動性が悪かったり,アイドリングが妙に高くなったりしていたので,ついでに,サイドカバーを外して,キャブレターを外して,分解掃除した。これで調子もよくなった。
ペソ,Chicaさんの足になり,ご苦労だったね。ライネケとも,もうしばらく付き合うことになりそうだな。がんばんなさいね。
諸君,くれぐれも、自賠責を忘れないようにしなさい。