院長より、当ブログに見えられた方々に、一言、ご挨拶申し上げる。
当ブログは、松前町という愛媛県の片田舎の町で、ちょうど三年前、皮膚科の診療所を開設した満58歳の医師の偶感である。私たちのささやかな診療所もちょうど満3歳になり、今から、4歳目を歩み出したわけだ。
ページの更新は、院長が主にするのだが、時に、その家族が、勝手にすることも多い。ページにより、時に、感触が変るのはそのせいでもある。一見、家族通信板のようだが、それだけを意図したものではない。勿論、子ども達に私の何かを伝えておきたい、という気持ちは強いのだが、実は意図も何もないと言えばないのである。
どうか、ご覧になって、何か感じられたなら、どうぞ遠慮なく、コメント欄に一言残して行っていただきたい。歓迎する。
2009.05.17
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「石の上にも三年」
冷たい石の上でも三年座り続けていれば、暖かくなるから、何事にも辛抱が大切だって云う事なんだそうだ。
開院してまる三年経った。三年間、辛抱という程のこともなかったし、冷たいと思ったこともない。何と云うこともなく、楽しく暮らして来た。開院前、面接で採用した6人の従業員が、6人ともそのまま、変らない雰囲気で勤めてくれている。選択眼に狂いはおおむねなかったということだ。
三年の間に、少しは患者が増えたけど、えらくブレークしたということは全くなくて、今でも、今日はひどく暇だね、という日もある。誰しも、自分が必要とされていないのか、と思うと寂しいものだ。今では大分慣れて、余りしょげなくなった。
開院以来の週単位の一日患者平均数だ。これには、石鹸やしみとりクリームのような保険外自由診療のために受け付けた人の数も含まれるので、実際は少し減るが、最近は、このような自由診療の患者はかえって減っている。
こうして見ると、患者数は1月から4月にかけてが底で、5月下旬から増え始め、8月の盆前後がピークになり、9月から減り始める、というパターンだ。
一日患者数は一年ごとに10人余り増加しているようだ。某皮膚科開業医によれば、開院6年目まで増加し、後は横ばいになって行ったそうなので、4年目の今年は、もっと増える見込みだ。余り患者数が少ないと、元気が出ないし、第一、経営的問題が生じるのだが、増え過ぎて、余りに慌ただしいのは困る。
一日6時間の診察時間で50人も診たら、今日はみっちり仕事した、という気になる。60人なら、今日はえらく忙しかったという感じだ。昔、K中央病院に勤めていたころは、真夏の繁忙期80名くらい、真冬の暇な時期で40名くらい診ていたかしらん。その他に入院患者もいたものね。
時には、午前午後の診察時間中、診察室にずっと居て、患者さんと向かい合う日もある。朝は12時、夕は18時まで受付だけど、それぞれ、30分過ぎ以内で完全に終了して、スタッフが灯火を消して戸閉まりして帰る。
レセプトといって、各月の締めくくりには支払い基金への書類をまとめて、提出するんだが、その作業も事務方の超過勤務になったことはない。よそでは、前々日くらいから、事務方が夜遅くまで残業し、院長までカルテの整理をするとか聞くけど。まだ、患者数が少ないせいもあろうが、最初からレセプトコンピュータ一体型の電子カルテにしたのがよかったのだと思う。いろいろ意見はあるが、電子カルテは時代の趨勢だと私は思うね。
さようなら、看板くん。3年間ご苦労であった。
伊予鉄の松前駅のホームの看板と医院近くの道案内看板を除いて、国道56号沿いの野立て看板や隣の駅の看板を撤去することにした。看板代って馬鹿にならないんだ。設置する時だけでなく、撤去するにも金が要るんだって。医者仲間に訊くと、看板には、余り集客効果はないんで、あれは犬の小便みたいなものだ、っていうのだ。みんな、えらそうにそう言ってる割には、沢山立ち並んでいる。林立している。ほとんど環境破壊的だ。その仲間入りはごめんだ。だから、もうやめだ。
患者数が、少しずつ増えて来た、と書いたけれど、今日はえらく暇だよ。朝一番の外来待合室に誰も待っていない。こんな時は、さびしくないかって?
ただの土くれの如く、価値のない、無意味な存在で居ようと思うのだ。そういう在り方っていうか、生き方がいいと思うのだ。能無しのデクノボウ。そういう心境に憧れる。自分の存在に意味がなくても、この「世界」という仮想的な空間の中で、ゆるがず、静かに、孤立して、生きて、消滅して行く。そういう存在に。
「塊然獨立」の図
う〜む、どうも、足もとが不安だ。
「塊然獨坐」
我家の母屋の座敷に昔からある大字の横額
右から左に読むのだよ。
なかなか、そういう境地に達しない。常に自分の特殊性を、自分の意味を、価値を見つけたいと思ってしまう。こういうのを迷いというのだろうね。
とか思っていたら・・・。おや、おや、電話の子機が鳴っている。下の診察室からお呼びだ。患者が来たらしい。
「はい、はい。分かりました。今、行きます。」
では、仕事に行って来ます。